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論説・コラム

深刻化しているサブリース問題(1)
<消費者契約法の類推適用で契約弱者である賃貸人の保護を>
相談委員 大谷昭二 平成24年7月14日
特定非営利活動法人 日本住宅性能検査協会
理事長 大谷昭二
最高裁判所の判例にサブリース契約をめぐっての判例があります(平成15年10月21日。事件番号:平成12(受)573)。この事例では、サブリースを提案した会社が契約書に賃料引き下げについての規定がない状態で、賃料減額請求ができるかどうかが争点の一つとなり、サブリースを提案した会社側が勝訴することになりました。

過去には不動産サブリース契約にはそもそも借地借家法は適用されないとする議論もありましたが、一連の最高裁判決により、「契約形式が不動産に関する賃貸借契約である以上、借地借家を適用すべき」という結論はほぼ動かぬものとなったと評価されます。

現段階での問題は、不動産サブリース契約にも借地借家法の適用があることを前提に、具体的な同法の適用場面において、不動産サブリース契約の特殊性がどの程度考慮されるべきかという点にあると思われます。消費者契約において普遍的な考えである[契約弱者]の概念を入れて法的支援が可能かを論じてみます。

不動産のサブリース契約において、不動産業者が遊休地を保有するオーナーに対して、この遊休地に収益物件を建築すれば、自社ないし提携する関連会社において一括借上げしてサブリースするので、オーナー@は、空き室や家賃滞納といった賃料収入減少リスクを避け、安定した賃料収入を得ることができる、相続税対策にもなるといった勧誘文言で契約締結をせまります。しかしながら、近時にサブリース契約では、契約期間が2年程度ごとに区切られており、その更新時において賃料の見直しが求められるなど、サブリース業者のリスク負担をオーナーに転嫁するような、賃貸人に不利な状況等が数多く見られるのです。その為、長期間の賃料収入を保証するという勧誘文言を信用して賃貸アパート等を建築したにもかかわらず、建築時に設定した住宅ローンの返済にも苦慮し、最終的には不動産を手放さざるをえないなどの深刻なトラブル事例もみられます。
このような契約類型において被害者的な立場にある者は、形式的には事業者になっているものの、その実態は消費者と同様であり、圧倒的な情報格差や交渉力の格差に起因する不利益・被害を受けているといった共通の実情があります。
このような場合い、事業者対事業者の対等の関係であり、自己責任,私的自治の問題であるとの一言で片付けてよいものかというのが問題提起の出発点です。これらの場合、被害者的立場にある賃貸人は、消費者に近似する立場にあるのであって、いわば契約弱者Aであるということができます。契約当事者間に現実に情報の質および量並びに交渉力の格差が存在しているもにもかかわらず、事業者間の契約であるということで、安易に救済を拒み、不当な勧誘や不当な契約条項を追認してしまうことは、契約における正義の観点から是認できるものではないと考えます。
不動産サブリース業者が不当な勧誘を行い、かつ不当な内容の契約条項を押し付け、そしてそういう不当な契約条項で契約を締結させた上、そういう契約内容に賃貸人を縛り、そして賃貸人に金員の支払いやリスクを押付つけている構図です。こうした取引が公正な市場と評価されるはずがありません。このような契約が横行する市場が良質な市場につながっていくとことはとても考えられません。こうした不公正な取引の実態というのは直ちに是正されなければなりません。これまでの情報量や交渉力の格差というのは、消費者と事業者との間にのみ存在するという前提でいろいろな法規制が行われてきました。そして、消費者基本法においても、事業者は、消費者に対して公正な取引を確保し、あるいは情報を明確にかつ平易に提供し、さらに消費者の知識や経験および財産状況に配慮するということが責務であると規定されています。
しかしながら、事業者がこうした責務を負うその根拠をよく考えてみますと、それは契約せん。多くの賃貸人が消費者被害に見られてきたのと同様の深刻かつ構造的な被害に遭っているという驚くべき実態があります。こうした被害の現場の状況を鑑みるとき、こうした現に被害の発生している契約類型について、直ちに各種の消費者法の規定に準じた契約弱者保護、あるいは契約の適正化と取引の公正を確保する立法措置というものがとられるべきであると考えます。

:資料1「消費者契約法の適用範囲」法セ549号18頁は、本法が「自然人」とせずにわざわざ「個人」という文言を用いているのは、個人と同視できる小会社等の場合には、本法の類推適用の余地を残す趣旨と解されるとしている。

:資料2判タ1202号4頁「サブリース契約紛争の当事者である不動産業者は、巨大な経済力と組織をもつ一流企業です。多くの場合、不動産所有者との力関係を考えると、消費者問題と類似する構造すら存在します」

続く(2012年7月28日土曜日更新予定)

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