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ADRに係わる論説、コラム・調停事例

深刻化しているサブリース問題(2)
<中小事業者の保護>
相談委員 大谷昭二 平成24年7月27日(金)
特定非営利活動法人 日本住宅性能検査協会
理事長 大谷昭二

1.不動産サブリース事業と借地借家法

(1)不動産サブリースと契約弱者
いわゆる不動産サブリースに於いては、賃借人兼転貸人が専門的業者、賃貸人たるオーナーが当該専門業者により契約に誘引された素人であり、賃貸人が契約弱者であるというケースが殆どです。

この場合,第1に、不動産サブリース契約の締結段階において、当該専門業者らが賃貸人となる者に対し、どのような説明義務を負うか、また、適合性原則等のその他の規範に服するかが1つの需要な論点です。

第2に、不動産サブリース契約締結後、契約の履行、解消段階において、そのような規律が適切か、検討していこことが必要です。

(2)司法救済の例として判例
実際に起こったサブリースの訴訟例を見ながら、まずは如何に日本の借地借家法が借主有利にできているかを理解すると共に、契約書に「賃料値下げはできない」旨が記載されていても、訴訟での結果、借地借家法の観点から無効とされた事実があります。契約書の条文は私法に過ぎないため、私法の中でどう記載されていようが、借地借家法などの民法(特別法)上、契約書の条文が認められないというケースは不動産に纏わる訴訟では珍しい事ではありません。

サブリース訴訟事例その1
平成15年10月21日(事件番号:平成12(受)573)に最高裁判例。
住友不動産は旺文社関連会社のセンチュリータワー(東京都文京区)にサブリースによる土地活用を提案します。センチュリータワーは住友不動産からの敷金50億円と銀行借入180億円とでビルを建築し住友不動産に平成3年賃貸します。契約期間は15年で中途解約不可。家賃は年20億円で3年ごと10%値上げ、値上げ率は協議で変更可ですが、値下げの定めはありません。

オフィス賃料市場はガタガタになり、住友不動産は借地借家法32条1項に基づく賃料減額請求をします。これは経済情勢が変ったなら契約条件にかかわらず賃料減額請求できるという強行規定。賃貸借契約書に値下げの定めがないのでこの強行規定による減額請求です。平成6年4月には14億円へ、同11月には9億円へ、平成9年3月には8億円へ、平成11年3月には5億円へと、それぞれ減額請求を続けます。これが裁判となり平成15年10月21日(事件番号:平成12(受)573)に最高裁の判断がなされました。

ポイントは「サブリース契約であっても借地借家法32条の賃料減額請求ができるのか?」。そこで「このようなサブリース契約の本質は、自ら住むためのアパート賃貸等とは違い、家賃保証というリスクを取って収益を得ようとする事業上の契約であって賃貸借契約ではない。だから借地借家法の適用はないので賃料減額請求権はなく賃料引下げはない」と議論されます。

最高裁は、たとえサブリース契約であっても、それが建物賃貸借契約である限りは、借地借家法32条1項の賃料減額請求が可能だと判断しました。ただし家賃をどこまで引き下げるかについては、借入金返済事情その他様々な事情を考慮しなくてはいけないと判じました。具体的な賃料については高裁に差し戻され判断がなされます。

平成15年10月21日には同趣旨の最高裁判決がもう一件でています。やはり住友不動産が借主で当初賃料年間18億円の賃貸ビルについてで、全く同じ結論の判決です。こちらの契約書には「いかなる場合も直近一年の賃料を下回らない」という明確に家賃値下げ不可との定めがありましたが、それでも結論は同じです。この二件の最高裁判決は新聞にも載り注目を浴びましたが、その2日後の10月23日に最高裁で別の判決がでています。【判時1844号54頁】

サブリース訴訟事例その2
最高裁平成15年10月23日【判時1844号54頁】
前二件の判決はいわば大企業間の争いでしたが、こちらは個人地主対大企業です。判決は個人の地主であっても、同じ結論になりました。
東京都目黒区の個人地主が三井不動産との共同事業でビルを建築します。借地人借家人立退きや隣接地買収まで含む三井不動産主導による共同事業だったようで、地主は金利年6%10年固定で11億円の融資を受けることにまでして事業をすすめます。
ここでのサブリース契約は個人地主が取得したビルの区分所有部分を三井不動産が平成7年3月から10年間を月1064万円保証で借り上げるというものです。
地主は940万円までの値下げなら認めるとの妥協案をだしますがそれ以上は応じません。
三井不動産は平成7年11月に家賃を509万円へとの賃料減額請求を行います。ただし減額請求の後も平成14年までずっと月940万円を支払い続けます
そして裁判。地主側は賃料減額請求は認められないとして1064万円の家賃の確認を求め、三井不動産は減額請求後の509万円だとし、過払い金額の返還を求めます。
最高裁の判断は前二件と全く同じ。解約不可のサブリース契約であっても賃料減額請求は可能、ただし減額後の賃料決定には様々な事情を考慮しろとして、差し戻しです。個人地主だからといっても同じ結論です。

総論
不動産自体や不動産投資商品を投資目的で購入した買主が損害賠償請求する法律構成としては、説明義務違反や詐欺等での不法行為責任を問うケースが多くみられました。

サブリース事例においても、オーナー側のマンション経営に対する知識、経験等の程度と、サブリース業者側の説明がどの程度であったか(パンフレットの細部にわたるまで詳細に説明していたか等)が判断の要素の1つとなってくることは避けられないでしょう。

過去には不動産サブリース契約にはそもそも借地借家法はて適用されないとする議論がありましたが、一連の最高裁判決により、「契約形式が不動産に関する賃貸借契約である以上、借地借家法を適用すべき」という結論はほぼ動かなくなったと評価されています。

現段階での問題は、不動産サブリース契約にも借地借家法の適用があることを前提に、具体的な同法の適用の場面において、不動産サブリース契約の特殊性がどの程度考慮されるべきかをいう点にあります。

続く(第3回予定は2012年8月11日更新予定)

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